2019年2月18日月曜日

なぜ口の中の病気である歯周病が全身に影響を及ぼすのか、その理由は完全に解明されたわけではありません

歯周病は「歯の周囲の病気」です。ですから歯周病の治療や研究は、今まで歯科の専門分野として位置づけられていました。

歯周病が口の中の病気である以上、これは自然なことといえるでしょう。ところが近年相次いで発表された研究結果から、従来のこのような考え方は、歯周病を正しくとらえる上で不十分であることがわかってきました。歯周病は単に口の中だけに起こる病気ではなく、全身にいろいろな形で悪影響を及ぼしているようなのです。
歯周病菌が全身を駆け巡る
なぜ口の中の病気である歯周病が全身に影響を及ぼすのか、その理由は完全に解明されたわけではありません。しかし、説得力があって、かつ既に証明されている理由として、「歯周病菌が血液に入り込んで、全身を駆け巡る」という事実があげられます。そのメカニズムを少し詳しく解説すると、次のようになります。

(1) 歯周ポケットは怪我の傷口が開いた状態と同じ
 歯周病は口の中に住み着いている細菌が炎症を引き起こして、歯周組織を破壊する病気です。歯周病が進行する足場である「歯周ポケット」は、組織が破壊されたり炎症が起こったりしていて、いわば「怪我をした後に傷口が開いたままになっている状態」ともいえます。ですから歯周ポケットからは容易に出血しますし、容易に細菌が体内に入り込める状況にあります。

(2) 歯周ポケットは歯周病菌の繁殖に最適な環境
 加えて歯周ポケットは、適度な温度に保たれていること、プラークが除去されにくいことなどから、細菌の繁殖にとって最適な環境で、膨大な数の細菌が暮らしています。傷口がいつも開いたままの状態で、しかもそこに細菌が多数住み着いているのですから、そこから血液の中に細菌が入り込んだとしても不思議ではありません。
(3) 歯周病菌は血液中でも生きられる特殊な菌
 ふつうの細菌は、血液に触れると白血球などの働きによってすぐに殺菌・貪食〈どんしょく〉され、血液中では生きられません。ところが歯周病菌は、もともと血液から作られ血液とほぼ同じ成分である、歯肉溝液の中で生存している菌です。ですから血液の中に入り込んでもあまり殺菌・貪食されずに、しばらくは生き延びられます。逆にいうと、そのような特殊な環境下でも生存できる菌だからこそ歯周組織でも生存でき、それがたまたま歯周病の病巣で最初にみつかったため歯周病菌と呼ばれるようになった、ともいえます。

0 件のコメント:

コメントを投稿